#01 クネ王国(辺境の集落エリアル)

賢王マイヤーが治める、西の大陸でもっとも豊かな国。
ファンザム帝国から逃げ延びたティラルとナツキを秘密裏に庇護した国でもあり、西の大陸で唯一ファンザム帝国に対抗し得る武力を持つとも言われている。(※しかし西の大陸は「イゾルデ砂漠」「マートル山脈」「エルダ樹海」という3つの天然障壁に南北が隔てられているため、現状では両国が大きく衝突することはぼ無いと考えられている)
国土の東端はエルフやイニスなどの異種族が棲む地とされている。
賢王マイヤーはヒト族と異種族の互いの存在と文化を尊重し、相互不干渉の姿勢を貫き、国民には異種族との一切の交流を禁じている。

~ Character & Data ~

ティラル・ベルティナ
(13~15)

物語の主人公。ファンザム帝国の第一皇子。
心優しく他人の悪意に鈍感な、純朴な少年。
《光の紋章》の所有者で、強力な治癒魔法を扱う。
幼少期から《守護者》として自分を守ってきた竜族のナツキを姉のように慕っており、4歳の頃に《神》に憑依された父・オリガによって祖国を追われて以来、逃げ延びたクネ王国の辺境の集落エリアルでナツキに守られながら成長する。
与えられた物や事柄をなんでも素直に受け入れがちで、自身の意思で何かを選んだり決断することにはやや不慣れ。
13歳になった頃、《緋い月》の出現とともに再び帝国から追手がかかり、ナツキと共に安住の地を求めて長い旅を始めることになる。

ナツキ・カナツイ・エリム
(21~23)

朗らかな性格の竜族の女性。面倒見のいいお姉さんで、特にティラルに対しては超が付くほど過保護。可能な限り彼の傍に寄り添い、眠る時も決して離れることはない。
竜と竜族の国「エリム竜王国」の王という立場でありながら、ティラルの《守護者》を勤める事を優先しているため、王としての仕事は祖国の異母妹ウェアに一任している。自身に宿る《竜の紋章》を使うことで竜を召喚できるが、ナツキ自身の戦闘能力も十分に高く、戦闘時に彼らを喚ぶことはほとんどない。
竜族としてはやや小柄な体格ではあるが、ヒト族の女性と比べるとかなり長身なため、どこに居ても目立つ。

アムル・グレアム・クネ(25)

クネ王国の第三王子。王命で、ティラルとナツキを自身の管轄する領地に匿っている。
根っからの民俗学・異種俗学オタクで、様々な地方のヒト族や種族に関する知識を持っている。そのため、ヒト族ではないティラルとナツキの生活に関してもよく気がつき、不自由のないように頻繁に彼らのもとを訪ねては何かと世話を焼いてくれた。
ティラルに読み書きを教え、読書という趣味を与えた人物。

ソルサ・ラスティーン(41)

辺境の集落エリアルに住む、壮年のヒト族の女性。偶然見かけたティラルとナツキを保護し、2人を我が子のように愛情をもって育ててくれた人物。

白狼

辺境の集落エリアルの近くに縄張りを持つ真っ白な狼。ティラルが1人で過ごしている時にのみ姿を現すため、エリアルの皆はこの白狼のことを認識していない。

クネ王国への亡命

《神》に憑依されたオリガの最後の願いとしてティラルを託されたナツキ(12)は、《神》の魔手から逃れてファンザム帝国から脱すると、エリム竜王国の竜王としてクネ王国の賢王マイヤーと交渉し、ティラル(4)を15歳になるまで人目につかない場所に匿う約束を取り付ける。
ティラルは非公式にエリム竜王国とクネ王国の庇護を受けて隠し育てられ、エルダ樹海に程近い辺境の集落エリアルから一歩も出ることなく、帝国の追手がかかる13歳までの時間を平和に過ごした。
なお、2人が集落を発った後、2人が生きた痕跡を消すために、集落は住人諸共アムルの手によって焼き払われている。

エリアルでの暮らし

ティラルはソルサという母親代わりの女性とナツキとの3人で生活し、集落の大人たちに我が子のようにかわいがられていた。集落に歳の近い子どもは居なかったが、近隣の様々な動物がニュートとの混血種であるティラルを慕い、彼の元を訪れていた。
また、2人の様子を確認するために度々訪ねてくるクネ王国の第三王子アムルに様々な書物を与えられることで、自分と外界を繋ぐものとして読書に熱中するようになる。
「運動不足にならないように」という名目で幼いころからナツキに剣術と護身術をひととおり教え込まれてきたため、それなりの基礎体力はあり、実はそこそこ戦える。しかし、ナツキが過保護すぎるため、それらを実戦で披露する機会はほぼない。

~ #01 クネ王国 Story ~

Image Song of “MYTH” / Track04.湖畔の朝

 

たまには対岸の町にでも連れて行って
やれればいいんだが……。

サリエル歴845年《夏の年》。
ナツキと共に《神》の魔手から逃げ延びたティラルは、西の大陸の中部にあるクネ王国の庇護を受けることになる。

行動範囲に厳しい制限は受けたものの、ティラルは自分を弟のようにかわいがってくれる第三王子アムルの監護のもと、「エリアル」という湖畔の小さな集落であたたかい大人たちに囲まれて13歳の少年へと成長していた。
それは、9年前のことなどまるで悪い夢だったかのように平和な時間だった。

しかしある満月の日、あの夜と同じ禍々しい《緋い月》と目が合ったことで《神》にその所在を知られたティラルは、再びかつての父親から命を狙われることとなる。

ヒト族の力ではいよいよ庇いきれないと判断したクネ王国の賢王マイヤーは、ティラルとナツキをその存在を知る者たちごと処理することをアムルに命じる。

王の勅命を受けたアムルは、辺境の集落エリアルをティラルの存在を知る住人たち諸共焼き払い、ティラルとナツキがこの地で生きた痕跡を完全に抹消すると、その時「偶然」集落に不在だった彼らに追っ手を放った。
 

▲クネ王国の賢王マイヤーの勅命を受けたアムルは、夕陽を背に直刀を鞘から引き抜くと、労いの言葉と共に自国の民を切り捨てた。

▲ナツキの呼びかけに顔を上げると、沈みゆく太陽を追うようにじっとりと姿を現した禍々しい《緋い月》が、ティラルの双眸を捉えた。

▲2人がクネ王国に亡命してから9年。
西の大陸全土に帝国の追手がかかることを報せたアムルの表情は、非常に厳しいものだった。

ティラルくん、「約束の日」よりも
少し早くなってしまったけれど、
外の世界を見に行きましょう。

白狼に導かれて洞穴に身を隠していた2人は、アムルの機転によりその命を救われる。
そしてクネ王国に身を隠し続けることが困難になったことを知ると、彼の助言を受けてヒト族が決して踏み入ることのない《帰らずの森》とも言われる「エルダ樹海」を東方に抜け、竜族と親交の深い「イニス」という有翼種族の里を目指すことを決める。

ティラルとナツキは自分たちを慈しみ育ててくれた辺境の集落エリアルとそこに生きた人々に別れを告げると、アムルに見送られて歩き始める。
安住の地を探し求める2人の長い旅は、こうして始まった――

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