#02 エルダ樹海

クネ王国の東部にある広大な樹海。
精霊濃度が高く、自身の存在維持に精霊の力を必要とする動植物もここに生息するため、異形の固有種が多い。
樹海の奥にはエルフの集落が多数存在しているが、樹海の外周には外部からの侵入を阻むように深い霧が発生しやすく、毒獣や毒草などが多く生息する。
ヒト族の多くはこの樹海を恐れて《帰らずの森》と呼び、よほどのことがない限り近づくことすらないという。

~ Character & Data ~

パルス(外見10)

住処を失ったエルフの幼体(雄個体)。
見た目は幼いがティラルの倍以上は生きているため、ティラルを弟(保護対象)のように扱う。
かつてヒト族との関わりを持っていたらしく、エルフにしては珍しく片言ながらもある程度ヒト族の言葉を使用できる。
エルダ樹海で負傷し身動きが取れなくなっていたところをティラルたちに助けられ、そのお礼に樹海の道案内を買って出て以来、彼らと共に旅をするようになる。
警戒心が強く、気を許した相手以外には一切近寄ろうとしないが、本来は好奇心旺盛で人懐こい性格の少年。
ふわふわモフモフしたものが好き。

モカチ

エルダ樹海で最も無害な生き物。
全身が白カビのようなもので覆われており、触れると手に白い粉が付く。
赤い瞳が5つあり、カチカチと歯を鳴らしてコミュニケーションをとっている……らしい。

精霊

空気中に漂うエネルギー体のようなもの。
主に魔力の代用品として利用されており、魔法を使用する際や、存在するだけで魔力を消耗する生体のエネルギー源となっている。
《神話時代》の終わりと共に大幅に弱体化し、生態系に大きな影響を与えた。
基本的にエルフ以外が目視することは出来ない。

種族:エルフ

精霊との間に《縁(よすが)》と呼ばれる特殊な繋がりを持ち、精霊の加護を受けることで存在する妖精族の一種。
今でこそ寿命は100年程度だが、精霊の力が強かった《神話時代》はその十数倍長寿な種族だった。
耳が長く、強膜を露出させない瞳を持つ。自らの属性&使役する精霊の属性が髪や瞳の色として現れる。
精霊を介してコミュニケーションをとるため、口数は少なく、表情もあまり変わらない。
精霊との信頼関係を大切にするため、嘘という概念がない非常に純粋な種族。

ティラルの共感覚

ティラルはヒト族の父とニュートの母から生まれた「混血種」である。
混血種の生態や能力には規則性がなく、謎が多い。
ティラルの場合、外見はヒト族と変わりないがニュート寄りの感覚を多く持ち、極端な小食、誰かに触れていないと眠れない、異常に眠りが浅い、触れた生体とある程度の意思の疎通が可能などの、ヒト族にはあまり無い特徴を持っている。
エルダ樹海では、森の精霊濃度の濃さから精霊を介して付近の全ての生体の意思や感覚が流れ込んできてしまい、心身をかき乱されて苦しむことになった。

~ #02 エルダ樹海 Story ~

Image Song of “MYTH” / Track05.霧深い樹海の中で

 

 
 イニスの里を目指す2人は、ヒト族が決して踏み入ることのないというエルダ樹海の中を進んでいく。樹海に生い茂る木々は、昼夜を問わず頭上を暗く覆い、《神》の眼でもある《月》の視界から2人を隠し、守ってくれた。
しかし同時に、外部からの侵入者を拒むように発生する濃い霧と魔力を帯びた異形の動植物たちは、情け容赦なく彼らの行く手を阻む。

 

どうしてぼくを殺そうとしたの?
ぼくは父様に嫌われる
様なことをしたの……?

 霧の見せる幻覚の中で父・オリガと対峙したティラルは、自分に向けられた強い憎悪の念にすっかり呑まれてしまい、揺らめく木の影やそよ風に吹かれた草の微かな音にも悲鳴を上げるほどに怯えきってしまっていた。
 さらに、樹海を満たす濃い魔力の流れは、周囲の生体との共感覚を強制的に引き起こし、未熟なティラルの心身をかき乱した。

 

▲白いカビの塊のような不思議な生物は、カチカチと奇妙な音を鳴らしながら一定の距離を保ったままティラルの後を付け回した。

▲樹海の動物による捕食の場面に遭遇したティラルは、首に噛みつかれた被食者の痛みを感じ取ってしまいパニックを起こした。

 ナツキはそんなティラルをなだめて支え、常に声を掛けながらなるべく明るい川沿いを選んでゆっくりと樹海の中を進んでいった。
 するとその先には、力なく樹にもたれかかったまま動けなくなっている、ひとりの瀕死の子どもの《エルフ》の姿があった。 

 ティラルの《光の紋章》を使った強力な治癒魔法により回復したエルフの少年「パルス」は、エルフにしては珍しくヒト族の言葉を解し、異種族であるティラルとナツキに興味を示すと、怪我の治療のお礼として樹海の道案内を買って出る。

 パルスはすっかりエルダ樹海そのものを恐れるようになっていたティラルの精神状態と特異な体質を察すると、精霊の力を借りてティラルから不快の原因を遠ざけながら、より安全な道を選んで樹海を東へと進んでいった。
また、彼にとって「不快ではないもの」のみを選んで、積極的に触れさせることでその恐怖心を少しずつ取り除いていった。

 しかし、日光の届かない常闇の樹海のなかで疲弊していたティラルは、霧が出るたびに父の幻覚を思い出しては怯え、連日悪夢にうなされていた。

 そんな彼の心を休ませるため、パルスは樹海で最も神聖な《精霊の泉》へと2人を案内し、彼らに常にエルフが見ている「光溢れる温かい樹海」を見せるのだった。
 

 

ここ、精霊の泉。
《特別》な場所。
お前たちにも、見える。

 精霊の泉でパルスが両手を広げると、何もなかったはずの一帯にふわりと無数の小さな光の粒(精霊)が現れ、彼のもとに集まり始めた。
これが、エルフたちの目に映っている世界。エルダ樹海の本来の姿だったのだ。

    感想箱(エルダ樹海)